デジタルガバメント・ジャーニー (3) リスクマネジメント実践編
デジタル化推進マネージャーの長田です。
前回記事では「デジタルガバメント・ジャーニー (2)」では、
プロジェクトマネジメント導入編
として、プロジェクトマネジメントの説明と行政としての切り口を独自の視点で書かせていただきました。
今回は第3弾として、「リスクマネジメント実践編」について、触れていきたいと思います!
1. なぜリスクマネジメントなのか
まずはリスクの定義のおさらいです。
リスク=目的または目標達成に影響を与え得る不確実性
プロジェクトは類に漏れず不確実な中で進行するものです。
行政サービスも1つのプロジェクトであり、品質ラインを安定的に高水準で維持するためには、不確実なものを放置せず、明確にすることでマイナス要素を排除し安定感を保つことができます。
こういった活動がまさにリスクマネジメントなのですが、これをシステマチックに行うことで行政サービスの品質維持が可能となり、さらにはより効果的に強弱を付けることも可能と考えます。
(これがまさにリスク・コントロールというものです。)
前回記事に書いた通り、知識エリアは収斂され機械的にこなせるものと生き物のように状況によってうねるものに分類されると考えます。
上図の通り、リスクを中心に他の知識エリアのプロセスを活動するのが実態と考えます。
つまり、プロジェクトマネジメントをする立場であれば最重要視することはリスクマネジメントであり、常にリスクの状況を監視するだけでプロジェクトの手綱はだいたい引くことができると考えます。
では、具体的にどのような手順でリスク・コントロールできる状況を作るか、次の章で実践方法を記載していきます。
2. 実践的リスクマネジメントプロセス
リスクマネジメントは一般的に以下の手順で行います。
しかし、実践場面においては既に別のプロセスと同時に行われているものもある(例えばリスクマネジメント計画はプロジェクト計画立案段階で終わっている)ので、一部端折って実践的に記載します。
3. Plan:どのリスクにどう対処するか決めていく
①リスクの洗い出し
決められた切り口から想像する
ユーザー関連:要件決定が遅延する
体制関連:コミュニケーションロスによる認識齟齬が発生する
技術関連:性能が出ない、製品同士を組み合わせられない、脆弱性
費用関連:見積漏れによる追加でタスクが発生する
○○が××すると△△が発生する可能性があり、☆☆に影響する、という書き方でリスク事象を具体的に記述する
1人だけで洗い出さない(叡智を結集して入口から取りこぼさない)
※経験値が物語る世界なので必ず複数人からリスク事象を集めるプラスのリスク(インフルエンサーにより想定以上の波及効果が発生するなど)を忘れないことも重要だが、慣れてくるまで欲張らない
②リスク分析
定性的に)発生確率を高中低で分類
定性的に)影響度を高中低で分類
定性的に)リスク対応計画の実行優先度を決定する(発生確率✕影響度)
定量的に)リスクが顕在化したときのコストインパクトを試算
③リスク対応計画の策定
発生させないようにすること(予防策)、発生したときにすること(対応策)をそれぞれ決める
コストをかけて行う予防策も気にせず記載する
二次リスクのことは一旦考えない
こうして以下のようなリスク管理台帳が作成されます。そしてここから、うねる手綱を制御するリスク・コントロールを始めていきます。
4. Do/Check/Action:リスク・コントロール
何度も記載していますが、リスク・コントロールがプロジェクトマネジメントの最重要ポイントです。実のところ、私が真剣に見るのはリスク管理台帳のみと言っても過言ではありません。
まずはリスク管理台帳に記載された項目1つ1つに対し、状況変化があるかないかを判断します。(このために日々情報の鮮度に気を付けて、最新の状況・状態を把握することが必要です)
状況変化が発生している場合は、二の手/三の手がないか、用意した予防策をやるのか/やらないのか判断(投資判断)を行います。
状況変化により、発生確率と影響度が変化していないか、予防策により消滅したか、残存リスクがないか、二次リスクが発生していないかも合わせてみていきます。
もしリスクが顕在化してしまっている場合は、予め用意した対応策を発動させ、リスク事象の早期鎮火を図ります。
言葉にするとたったのこれだけですが、たったのこれだけを常に意識して状況変化を追うことでプロジェクトは絶対にうまくいきます。うまくいかない場合は、リスクマネジメントプロセスのどこかに不十分さが存在しているだけなので、それは次回に生かせばいいと思います。
是非自分の武器にしていただき、行政サービスを含めたプロジェクトの安定さと安寧さを享受してもらいたいと思います。