サービスデザインの取り組みを、経済産業省でやってみて
すでにオンライン化が非常に進みつつある世の中で今さら感もありますが、行政手続はまだまだ書面での手続が多い状況です。
このような中で、経済産業省における行政手続のオンライン化を推進するにあたり、どうやったら行政職員がスムーズに「オンライン化=システム開発の推進」が行えるのか?
サービスデザインプロセスを活用したプロジェクトを通じて、わかった課題や今後の検討について、民間企業出身のデジタル化推進マネージャー 金井がご紹介します。
なぜ行政が、サービスデザインプロセスを重視するのか?
行政手続は複雑で、わたくし自身も個人としてサービスを受ける場合に迷うことも多いです。しかし、仮にサービスが悪くとも、行政手続は他に代替するサービスがないので利用せざるをえません。
民間から行政に入ってみてとても真剣に国を、自分の街をよくしていこうとしている行政職員が多いことを感じています。ただ、行政側には「他に代替するサービスがない」ということに胡坐をかいているのではないか?行政手続は利用者満足度=売上にならないため、民間サービスに比べると利用者視点がおろそかになっているのでは?と感じるところもあります。
そのような中、デジタル庁では、サービスデザインに積極的に取り組んでいく姿勢を明らかにしており、行政としてその重要性を伝えております。
経済産業省の行政手続も民間企業のサービスと同様、ひとつのサービスとして書面での申請も、システムからの申請も利用者の満足度を上げ、「サービスを使っていただく」という考え方が必要であり、サービスデザインを取り入れています。
行政手続のオンライン化のペルソナを「国民・事業者」ではなく「行政職員」にした理由
本来、行政手続の申請や報告などを行うのは国民・事業者で、国民・事業者の課題を解決することが重要です。
しかし、今回の目的は「行政職員が中心となって、行政手続の”オンライン化=システム開発の推進”を行うための課題と解決策の検討」のため、ペルソナは「経済産業省の行政職員」としました。(もちろん、その先の国民・事業者も見据えることは忘れずに)
行政手続のオンライン化は、法令や政策の制度設計を行っている担当課室の行政職員が中心となり、システム契約事業者とともに取り組んでいます。
ただ、いわゆるシステム開発の推進・マネジメントを行ったことがある行政職員はまだまだ少ない状況です。
これだけを聞くとIT有識者をアサインすればいいのでは、と思われるのではないでしょうか?
実際のところは、政策の制度設計に精通した行政職員でないと、業務フローや必要事項、リスクがわかりません。したがって、オンライン化のリーダーシップは行政職員がとることが必須となっています。
また、経済産業省内でもIT有識者が多いわけではないため、全プロジェクトをしっかり見ることは難しい状況です。
このため、行政職員のオンライン化業務の課題解決をすることで、業務がスムーズになり、ひいては単に書面でのやりとりをシステム化することにとどまらず、利用者の満足度が高い行政手続システムができるのではないかと考えています。
行政職員が感じている課題は、企画~調達工程の知識不足が大きい
行政職員にもITスキルが必要、という話は経済産業省を含む行政機関、そして民間企業の社員にとっても同じことです。そしてこの「ITスキル」というのは、具体的にどのようなものなのでしょうか?そこにはいろいろなスキルや考え方があると思います。
今回、サービスデザインプロセスを用いて行政職員に調査をしてみたところ、IT用語がわからない、プロジェクトの進行がわからないといった当初想像していたような課題ではなく、サービス・業務企画、要件定義、BPR工程~調達工程の課題(ペインポイント)が大きいことがわかりました。
行政職員のオンライン化業務の課題を解決する、3つのポイント!
サービス・業務企画、BPR、予算の検討(予算要求)、調達といった「システム契約事業者と契約する前の工程」が滞りなくできること。
要件にあったシステム契約事業者を、きちんと調達ができること。
システム開発工程を理解し、要件定義、設計・開発工程でなにを決めないといけないのか、リスクをきちんと理解をすること。
行政手続のオンライン化を加速するための、経済産業省の今後の取り組み
行政職員の課題(ペインポイント)を受け、オンライン化の課題解決策として、経済産業省イントラネットサイト「METI DXポータル」を開発し、2022年8月にリリースしました。
実施をしたい施策は多いですが、まずは足元を固めるためにサービス・業務企画、要件定義、BPR工程~調達工程の行政特有の知識、ガイドをきちんと整理することを優先しています。
今後は行政手続も「サービス」であること、オンライン化をただの手段とせず、業務効率化や進捗の見える化、効果検証、データ形式の整備、政策への反映といったことを視野にいれて、行政手続のオンライン化を行政職員自身がリードして推進できる仕掛けを行っていきたいと考えています。
経済産業省 DX室の行政職員が執筆した記事も、ぜひご覧ください!