DXに必要な行政職員のスキルってなんだ?
はじめまして。情報プロジェクト室の髙柳です。
始めに、自己紹介をさせていただくと、私は行政事務研修員として、2021年4月に情報プロジェクト室に着任しました。いわゆる出向者です。2021年3月以前は袋井市で地方公務員として勤務していました。
せっかくなので、袋井市の紹介をさせていただくと、袋井市は静岡県西部に位置する人口約8万人の地方都市です。東海道の真ん中に位置する宿場町として発展した歴史を持ち、東京や大阪といった東西の都市部へアクセスが容易です。ただし、裏を返せばどちらからも等しく遠いです。
豊かに広がる田園と美しい茶畑を有し、お茶とメロンが特産品です。
個人的な意見として、ものすごく発展しているわけでもなく、生活に困るほど田舎でもなく、生活するのに”ちょうど良い”街だと思っています。方言を使うと「超どイイ」とも言います。ググってみてください。
興味を持っていただけた方は、以下のリンクにプロモーション動画がまとまっていますので、覗いていただけると嬉しいです。
さて、私は出向の際に「国のDXを勉強してきてください!」と言って送り出されました。着任から1年以上が経過し、これまでの経験を振り返りながら、行政職員に求められるDX人材像について、自分が感じたことを記事にしたいと思います。
(あくまで、個人の考えであり、間違った解釈であったり、所属する組織の見解と異なる内容が含まれている可能性があります。ご容赦ください。)
1.そもそもDXって何なんでしたっけ?
昨年9月にデジタル庁が発足して、行政の世界でもDX、いわゆるデジタルトランスフォーメーションが加速してきたと感じます。しかしながら、DXという言葉の捉え方は、個人によって多少違うようにも感じます。
行政の現場で叫ばれているDXとは何なのか。
私は「デジタル技術を活用して、行政サービスをより良い方向へ変革させていくこと」だと思っています。この場合、デジタル技術は手段であり、達成するべき目標は行政サービスをより良くすることです。
「デジタル技術」はパソコンやスマートフォンだったり、その中に入っているデータやプログラムだったり、それらを繋ぐネットワークだったり、AIやビックデータといった難しい技術等もあったりで・・・
一言では言い表せないほど沢山の分野があると思います。
「目的のためなら手段を選ぶな!」といった言葉のとおり、DXを達成するためには、数あるデジタル技術の中から特定のものに固執するのではなく、まずは、どうすれば行政サービスをより良くできるのかに思いを馳せるべきであり、その上で、どんな技術を用いれば実現できるかを考える必要があると思います。
つまり、「とりあえず、システム化すればいいんでしょ」とか「テレワークすればいいんでしょ」といった、単純にデジタル技術を導入して「はい、お終い!」といったことではDXとは言えず、達成したい目標を明確にした上で、デジタル化に伴って運用や制度を考え直すことが重要だと思います。
2.行政手続のオンライン化を例に考えてみよう!
行政手続のオンライン化を例に、DXについて考えてみます。
先ほどの整理に立って考えれば、オンライン化は目的ではありません。
目的は行政手続が簡単になることで、国民・事業者(行政職員も)が面倒な作業から解放されることです。
究極を言ってしまえば、オンライン化とか関係なく行政手続を意識しない社会になるのが望ましいですね。ただし、行政手続自体が不要になるのは、まだまだ先のことだと思います。
このため、民間のオンラインサービス同様、今の時代にふさわしい姿に生まれ変わらせることが行政手続のオンライン化だと私は考えます。
この時に、運用の見直しを行うことなく単純にオンライン化だけ進めると、国民にも行政職員にも、むしろ非効率なサービスになってしまうことが起こると思っています。
例えば、以下のことが考えられます。(あくまで例です。)
「昔からの方法」「決まりだから」「見直しに時間がかかる」と躊躇して、諦めてしまう気持ちもわかります。(私もこの気持ちが無いと言えば嘘です。)
でも、少しでもより良いサービスを目指して、覚悟を持って思い切り挑戦してみることが、むしろ失敗をしないポイントかもしれません。
3.行政職員に求められるスキルって?
これまでの内容を前提として、私が個人的に考えるDX達成に必要な行政職員のスキルは、「行政サービスをデザインする」ことだと思います。
引き続き、行政手続のオンライン化を例に、具体的に必要な作業をいくつか挙げたいと思います。
(これだけではない気がしますが)以上のことを整理して、必要な要件をまとめることできるかどうか。そして、オンライン化に伴って手続や制度自体をあるべき姿に変えていくことが、自分が思う行政サービスをデザインするスキルだと思います。
この時、プログラミングやデータサイエンスといった高度なITスキルは必ずしも必要ではなく、個人的には「デジタル技術を使うと多分こんなことができるよね!」くらいの理解があればなんとかなると思います。
ITスキルよりも制度を良く理解することの方が重要とさえ思います。
そして、システムとして必要な要件整理ができてしまえば、実際のシステム化は、ベンダーに開発委託するなり、ITスキルを持った人材の助けを借りることで何とか進められると思います。何も「自力でシステム開発しなさい」と言われているわけではありませんので。
逆に、「デジタル技術って良く分からないから、”制度設計から”ベンダーにお願いしよう」と言って外注に頼り切ってしまった場合、ベンダーは日ごろ行政組織の内側で仕事をしているわけではないので、制度運用の中身や政策的意義を完全に理解することは難しく、実現したかったことと違うシステムが構築される恐れがあります。
制度担当者は、様々な国民・事業者向け行政サービスを運用するプロであるべきであり、行政サービスにデジタル技術が入り込んできたとしても、それらを上手く融合してデザインする能力が必要であると考えます。
この辺の話は以前、我が情報プロジェクト室長の吉田も記事にしていましたね。
ただし、「デジタル技術を簡単で良いから理解しよう」と言って、誰でもすぐにできることではないのも事実かと思います。
この点、情報プロジェクト室では、民間のIT人材を「デジタル化推進マネージャー」として雇用しています。行政職員とIT人材が二人三脚でデジタル化を進めつつ、行政職員のITリテラシーを内側から高めていくことで、いずれは組織全体を変革することに繋がっていくと考えます。
4.近い将来、行政職員は自分でアプリケーションを構築するようになる?
私は現在「Gビズフォーム」という、ローコードツールを活用した行政手続アプリケーションを開発するプラットフォームに携わらせていただいています。
これはMicrosoft Power Platformを利用した仕組みですが、少し前に、「Power Platformは、WordやExcelを使って資料を作る感覚で、誰もがアプリケーションを構築できるようになることを目指している」といったお話を伺いました。
4月は新入社員が入社する時期でしたが、「WordやExcelの使い方がわかりません」といった方は、年々少なくなっているように感じます。
この感覚に近いものが、近い将来、アプリケーション構築の現場においても起こり得るのかもしれません。
誰もがアプリケーションを構築できるようになるのであれば、その土台として、サービスをデザインする能力は欠かせないものになると思います。
5.おわりに(民間IT人材を募集しています)
散々偉そうなことを話しましたが、私自身まだまだ未熟です。
袋井市に戻った時に少しでもデジタル化に関する取り組みが進められるように、引き続き情報プロジェクト室のメンバーとして、デジタル化推進マネージャーや関係する皆様と様々なDXに挑戦する中で、サービスをデザインするスキルを身に着けていきたいと思います。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
最後に、情報プロジェクト室では、行政職員と一緒になってDXを進めてくれる民間IT人材を募集しています。興味がある方は、是非ご応募ください。
一緒に働きましょう。(特にローコードエンジニア!)