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「デジタル改革担当大臣平井卓也氏のメッセージで開幕」Govtech Conference#5前編

2021/2/17我々情報プロジェクト室企画運営のもと、経済産業省主催のGovtech Conference#5を開催しました。Govtech Conferenceは、経産省をはじめとする中央省庁のDX/Govtech事例の紹介し、行政デジタル化に携わるすべての人へのノウハウ共有・浸透を目的としていますが、今回は新たに「No one left behind」をテーマに掲げ、これまでの趣旨を継続させつつも、対象者・裾野の拡がりも目指し、DXのプレーヤーであり、また究極の受益者でもある市民・国民の目線と存在に重きを置いた企画を重視しました。

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会場からの中継
各セッションの間には、控室トークのような形で、モデレーターを務めた出演者の皆さんと経済産業省の担当者がカンファレンスの中で話されていたことについて振り返ったり、実際の業務などに紐付けて事例を話すなど、オンラインならでは時間が設けられました。

パラレルMeetup
全てのセッション終了後、登壇者や参加者の交流機会として、オンライン会議ツールを用いたパラレルMeetupが開催されました。会の内容全体をグラフィックレコーディングを見ながら振り返る部屋や、自治体職員向けの部屋、アジアのシビックテック連携やDXについて意見交換する場、今すぐ使える民間サービスについてシェアする場などが設けられ、関心領域ごとに集まった皆さんの対話の機会となりました。

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今回で5回目を迎えたGovtech Conferenceは、自治体職員やスタートアップ企業からのピッチなども含めて、これまで以上に多様なプレーヤーから実践してきたケースを共有いただき、また今後推進していくに必要な問いやそれを打破していくに向けての意気込みを同時に受け取ることができる機会となりました。デジタル庁開始となる9月も節目となりますが、これからも理論と実践を行き来しながらDX/govtechを産官学民で前へ進めていくためのカンファレンスとして回を重ねていきたいと考えています。

1.オープニングメッセージ

5回目を迎えるGovtech Conferenceはスペシャルゲスト、デジタル改革担当大臣 平井卓也氏からのメッセージとともに開幕しました。

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「No One Left Behindという今回のテーマはデジタル庁が目指す世界感と一致するものであり、我々が提出するデジタル社会形成基本法案(※)も格差を作っていかないこと、多くの皆さんにアクセシビリティを保障すること、高齢者、障がい者全ての皆さんにとって、優しいデジタル化を進めていきたいということを大切にしていることから、このNo One Left Behindという考え方に近しいと感じています。」
(※2月17日時点)
「デジタル化には、デジタイゼーションとデジタルトランスフォーメーションの二つがあります。今までの仕事のやり方を見直せずに単純にデジタル技術を使って「デジタイゼーション」をするだけでは大きく変わらないし、大きな価値を創造することはできないので、さらに仕事のやり方の見直しを含めて継続的に取り組み続けていかなければならないのが「デジタルトランスフォーメーション」だと今一度確認し、いろいろな政策の内容が変わったとしても、そのことを素早く、ローコストで実現できるっていうことを保証していける、常に変わり続ける仕掛け自体をどのように作るのか考えなければいけません。」
「何よりもやっぱり現場の声こそが一番重要で、この現場の声=UI/UXに繋がると考えています。その意味で、これから国民目線でシステムを見直していく上において、現場に携わっておられる皆さんの意見は非常に重要だと思います。今までのやり方を自分たち自身で疑ってみることからはじまります。 過去はこうやってきたからこうやる、こうやらなきゃいけない。ハンコの問題なんかその最たるものだと思います。なぜだかは分からないけれども、前任者が押していたハンコは同じ場所に自分も押すんだと。このハンコの意味は何かを突き詰めずに進めてきたことも、今回の規制改革法案の中で大幅に見直すことになりました。」
「デジタル化の一番大きな障害は、自分自身の心の中にあるのだと思います。デジタル化は必要だと誰もが感じていながら、デジタル化によって間違いない価値が作れる。つまり国民が喜ぶサービスができる、イコール国民が幸せになれる社会。サスティナブルで、その経済成長にもつながるものを、きっちり描ききっていないのではないかと思います。徹底的にやり方を見直す覚悟を決めることだと思っていて、明らかに日本が遅れていると痛切に感じています。不退転の決意でスピード感をもって、デジタル庁を国民のための新しい役所としてスタートさせたいと考えています。」
「デジタル庁は、規制改革の象徴であり、成長戦略の柱ですから、日本が成長戦略を描く上で、越えていかなければいけない問題がいくつかあります。 
社会全体のレジリエンスをもう一段上げていかなきゃいけない、そのためには、このデジタル化が絶対に必要です。 
強くてしなやかで小回りのきくGovernmentをどうやって作っていくかというのが、今後大きな課題だと思っています。 
皆さま方のご協力を心からお願い申し上げまして、私からの言葉に代えさせていただきます。」 

という大臣からのメッセージには、これからスタートに向けて準備が進んでいくデジタル庁への期待と意気込み、そして国民にもデジタルトランスフォーメーションに向かって共に歩んでいって欲しいという思いが込められているものでした。


2.オープニングパネル

「No one left behind 〜トップダウン x ボトムアップ〜」と題し、トップダウンについてを河野大臣の補佐官も任命された衆議院議員小林史明氏とボトムアップはシビックテックに取り組むCode for Japan関治之氏がそれぞれのアプローチについて、これまでのご経験とこれからに向けての意見を交えてお話しいただきました。

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日本のデジタル化の進捗状況については、小林氏からは、
「日本のデジタル化がアナログだった。PDFでデータを公開したとしても、機械が読み取れるものではなく、手段の目的化になってしまい、意味をなさなかった。国民が抱える課題に対して、プッシュ型でカスタマイズされたサービスを行政が的確に届ける様にしていくべきではないかと考えている。」
と指摘があり、それに対して関氏からは

「日本には沢山の自治体がある。それぞれにあったやり方で市民の生活をより良くするために考え、市民も参加しながらともにつくっていくのが大事なのではないか。本来の生活者の幸福のためにという視点に立ち戻り、テクノロジーを活用することでより多くの人の声を載せていきながら実現していく。オープンガバナンス、プロセスを透明化していくことで、地域のために動きたい人たちが気持ちよく動ける様にしていくことも求められていくのではないか。」と提案がありました。

また、技術リテラシーが低い・参加できない人の意見はどう集約したらいいのかという問いに対しては、実際に加古川市で導入しているバルセロナ生まれの意見集約ツールdecidimを例に「オンラインのコミュニケーションにオフラインのワークショップも織り交ぜています。なんでも全てをオンラインにするのではなく、意見をいうべき人のところに行って話を聞くことなどは大事だと思っています。そして、集めた意見はきちんと集約し、わかりやすく可視化していく、オープンにしていくことで、職員さんや議員さんが実行できる様に繋げて行けるのではないか。デジタルを活用することで楽に実現していけるようになれば」と関氏が挙げ、これに対して小林氏も

「各地域にそれぞれ課題を持っている人たちがいて、得意技を生かせる人たちもいる、誰かがそれらをコーディネートする必要があり、そういったリーダーが地域に不足している。なので、それは私たち若い世代の議員がになっていけるのではないかと考えている。苦手な人に寄り添うといったデジタルに対するアプローチではなく、一緒に前に進んで行ける様にしていくことが求められているのではないか考えている。テレビが段階経て地デジ化していったように、国民全体がアップデートしていけるように進めていきたい。」

とオンラインとオフラインの融合や実社会から声やアクションを拾い上げていく形についての意気込みがありました。

また、個人情報や情報のオープン性についても議論され、小林氏からは住民基本ネットワークをつくった頃から今に至るまでの経緯を踏まえて、今なぜマイナンバーが必要なのか、それによってどんなサービスが届けられるのか、履歴が残って確認できるオープンガバナンスの実現に向けて伝えることが必要だということ、また関氏からは慶應大学の宮田教授が述べていた「最大多数の最大幸福ではなく、最大多様の最大幸福が提供できる」という視点を踏まえ、シビックテックも含めて、豊かな暮らしとはなんなのかという問いも含めて、地域ごとに様々な仮説検証やチャレンジが生まれていく様にしていきたいという話がありました。

サイバーセキュリティについては、何のデータを扱うかにも依っても、どんな技術で暗号化・匿名化できるのかなど精度やアプローチは様々なので、データの特性に応じて最適なものを選択していく必要があること、またそれを専門的な言葉ではなく、わかりやすく翻訳するなど国民に伝えるための工夫が必要になっていくこと、これまでの強固なところに集約するやり方だけでは柔軟性が失われてしまったりするため、国民一人ひとりのリテラシーをあげながら、投資や研究が必要になっていくことが関氏から挙げられました。

これに対して小林氏も「とにかく事故事件が起こらない様に、漏れない様にとかん完全防備をしてきたが、そうではなく何かが起こるかもしれないという前提で、ゼロトラストの考え方で、想定しておく対策しておくことが必要になっていくのではないか。」と応えました。

今後のGovtechにおける課題とそれに対するアプローチについては、人口減少のなかで情報格差が起きないよう、市民と行政がアップデートしていくことを小林氏が、透明性の高いガバナンスを実現し、信頼関係を再構築していくこと、そのために一緒に手を動かしてアクションしていくことを関氏が提案し、CivictechやGovtechが共に進んでいくことで地域の課題解決は楽しく実現していけるのではないかと示しました。

3.パネルディスカッション

「Start with the problem 〜デジタルの世界から取り残されないために〜」
排泄ケアシステムの会社を創業しながら介護職現場で勤めていたこともある宇井吉美氏、女性の就労支援において、IT活用を模索している小安美和氏、北海道の森町でGIGAスクールの整備などに取り組む山形巧哉氏がモデレーターに奥田浩美氏と共に、現場で見てきたこと、やってきたこと、考えていることを踏まえ、誰もが取り残されない形を検討していきました。

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テクノロジー先行になって現場が取り残されていないか?という問いからパネルトークが始まり、介護領域の実情と技術振興のギャップを実感している宇井氏からは「技術職は数十年先、未来を考えて研究開発している。一方で、介護現場では紙やFAXがまだまだ根強く残っていたりするので、ギャップで言うと50-60年の違いがあるのではないか」と研究と社会実装の間にある壁について述べられました。

GIGAスクールで地域の教育現場でICT活用に取り組む山形氏からは「大きなギャップがある社会において、子どもたちは「今」を生きているので、過去とか未来とか言っている場合ではないと感じた。これまでの教育がダメとかではなく、テクノロジーを使うことがあまりにも当たり前な世の中で、乖離が激しい教育現場においては子どもたちに修行に近しいことをさせてしまっていた。少しずつ教育の中でも「今」を子どもたちに伝えることができるようになってきたのではないか。」とサービスを受ける側が暮らす実際の社会に即した形への変容が必要であることが語られました。

支援に取り組む中で伝えたいことは?という投げかけには、介護領域の宇井氏からは「介護現場に立っている人は、人の支援をしたいという気持ちが強く、フォロワー気質の人たちが多い。彼ら自身でイノベーションを起こして欲しいと求めるのは性質的に相性としても無理があるのではないかと思っている。彼らは今この瞬間の支援ついて考えることを大事にしているので、テクノロジー活用にはコーディネートが必要になる」

女性の就労支援に取り組む小安氏からは「そもそもパソコンを所持しない・使用しない人たちには何をしたらいいのか、どんなツールは何が最適なのか、どんなデジタルスキルが必要なのか議論していきたいし、求職者のデジタル教育だけで就労につながるのか。つなげるためには雇用側の意識改革などの仕掛けも含めた包括的な設計が必要ではないかと感じている」

教育現場への導入に取り組む山形氏からは「学校の先生たちも不安がっていて困っている、それが子どもたちにも伝わったり届いたりしてしまっている。先生たちや保護者を支援していくことや住民に対しても広く支援していくことが必要なのではないか」

と介護・就労・教育それぞれの課題点や困難なところを示していただきました。

また、実際にテクノロジーを活用していくときの姿勢・実際の着地点はどこになるのか?という問いには、「現場の支援者が求めていることに徹底的に寄り添う。技術者ドリブンになってしまっていないか立ち止まって確認する。排水センサーも、技術的には体に直接装置をつけたほうが簡単だが、身体に機械をつけたくないという支援側のスタンスを守ると技術的には困難な方法になる。

その分、その意見を守ることでフォロワーとして信頼してくれる。そのためにも徹底的にも寄り添うことが必要だと感じている。」と宇井氏が述べ、寄り添うことから生まれる信頼、その反対にあるのが恐れなのではないかという話から、山形氏は「年代・領域などによって、それぞれのクラスタ間のギャップがあり、それが取り残しの感覚を産んでいるのではないか。結果分かり合えなかったとしても、お互いを知ろうとすることが、お互いの目線で見てみることが、デジタルだからこそより一層必要になっていくのではないか。」と対話の必要性を示した。

モデレーターの奥田氏からの、社会を俯瞰して捉えていくと全ての人に寄り添うということは現実的ではないとして、それでも取り残さないために寄り添っていくには何を捉えて、明らかにしていけばいいのかという投げかけに対しては、「経営効率化が度を超えると、言葉のベールで覆っただけの謀略が蔓延してしまう。まちの電気屋さんのような、ちょっと使い方を教えてあげられる人を地域に増やしていく必要性があるのでは」というまちづくり視点の提案を宇井氏、「デジタル化という言葉は、ある一定の年齢を超えた方々には先走って伝えなくてもいいのかもしれない。

全員が一斉には使わなくていい、使える人がまずデジタルで効率化したら、効率化した人たちの余力ができて、他の皆さんのサポートができる様になる。だから、まず上の方々がデジタルを認めてくれさえすればいい。余裕ができたら、余力ができたら人は優しくなる、サポートできる様になっていくから、まずそこからつくっていけたらいいのでは」と職場導入の入り口を山形氏が示した。

まず「チョットデキル」ではなく本当に少しできる人たちが、ちょっとずつ周りの人に教えたり支えたりしていくことから始まるのではないか、そして得体の知れないものとして怖がられるのではなく、「デジタル」の捉え方をワクワクするものに変えていける仲間を増やしていけたら「社会課題と技術」どちらの立場からも歩み寄って社会を変えられる。相手任せではない自分たちの主体性によって希望が見出せるパネルトークとなりました。

後半記事に続きます。



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