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民間IT人材として行政に転職した私が得た3つのこと

こんにちは。私事ですが、IT人材として経産省に働き始めて1年半が経ちました。

それまで民間企業でSEとして10数年、行政や行政システムと全く関わりのない業界で働いていた私としては、学び先入観の崩壊の連続でした。自分が生まれ育った日本を支える行政というものの、ごく基本的な仕組みの理解不足に落胆しながら「マンガで知る政治と行政」を1から読み、中央省庁が全部言えるよう壁に組織図を貼り、都道府県と市区町村は上下関係じゃなく、法律上横並びなんだよ(※1)と優しく訂正してくれた先輩に支えられ、ここまできました。

行政組織は、その関係団体も含めると巨大かつ複雑で、膨張を続ける宇宙のような存在です。そもそも私はまだその1割も見えていないと思います。でも1割でも、私の先入観や、今後のキャリアパスを変えるには十分でした。今日は私が行政に転職して得た3つの事を共有したいと思います。

1.「行政で働く人」に対する先入観が崩壊

私はこれまで中央省庁と縁遠いところで働いていたので、その組織や「中の人」に対して、これまでの役所での経験やニュースなどをもとにした先入観を持っていました。一言でいうと「規律を何より重んじる、知性・理性のかたまりな人たち」という印象でした。正直ポジティブではない方の意味で。

つまり、知的で真面目だけど融通の利かない、ロボットみたいな人がいっぱいいるんじゃないかと。転職すると決めたはいいものの、一緒に働いていける自信はないぞ、と。。

ところが入ってみてまず驚いたのが、その慎ましさです。もちろん礼儀としてという事かもしれませんし、全員というわけでもないかもしれません(笑) ただ私が関わってきた行政官(職員)の方は、自身に理解が及んでいない領域がある事を大前提にしながら意見する事が多く、「すみません、私の理解が間違っているかもしれませんが..」という話し方をよくされます。他省庁の方と会議をするときも、同じような発言をよく耳にします。

冒頭でも書きましたが、行政組織はその役割も機能も幅広いため、結果論としてそういうコミュニケーションが慣習化しているだけかもしれません。でも実際には、彼らなりに下勉強をして臨んでいるはずで、表面上は相手に対し謙虚な気持ちをもち、理解が違ったと気づけばすぐに訂正する、そんな姿勢で日々の仕事に向き合っている姿に脱帽という気持ちでした。(と同時に、前職での部下への偉そうな叱責を反省する自分がいます...)

もう1つ驚いたのは、その親しみやすさです。入省した当時、私が所属する情報プロジェクト室には、内閣官房に所属するCIO補佐官(現在は制度廃止)の方々が併任されており、一緒にお仕事をしていました。CIO補佐官といえば政府全体のデジタル化戦略を推進する立場で、主に民間で著名な実績をあげられてきた有識者であり、その言動行動が社会全体へ大きなインパクトを与える、いわば政府戦略を左右するお偉方です。

ところが私が出会ったCIO補佐官の方々は、偉い人オーラ・威圧感など全く見せず、気さくに色々な話をしてくれました。過去の苦い経験も面白おかしく、忖度のない、人間らしい言葉で教えてくれました。そして、デジタル化に関する世界中の動向・技術を日々遅くまで情報収集を続ける姿に敬服しました。偉い人ほど偉ぶらず、おごらず、地道かつ着実にあるべき道を切り開いていく、そういう人間力の塊なんだな、と気づかされました。

今はデジタル庁などに活躍の場を移されていますが、今でも会うと「よっ」と気さくに近況を話してくれる、ありがたい存在です。

そんな出会いを経て、私の行政の中の人への先入観はあっさり消え去り、ちゃんと人によって、人らしく悩みながら、人のために行政は動いているんだなと思い知りました。冷静に考えると当たり前な事ですが、目の当たりにしてみて、これまで政府動向のニュースを見て「これだから行政は」と、先入観満載で非難していた自分の愚かさを痛感しました。

2.仕事の社会へのインパクト

私の所属部署は経産省のデジタル化を推進するのがミッションですが、その活動範囲は多岐にわたります。

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経産省のメインミッションは日本の経済活動を支えることです。デジタルサービスとしては主に法人・事業者向けの行政手続があります。行政手続というのは、例えば産業保安グループの場合、電気やガス、火薬などを扱う事業者が、安全にこれらを運用できるよう必要な規制を作り、届出を求めたりします。貿易経済協力局は、国際取引の正常な発展などの観点から、日本で輸出入される貨物の規制や、事前の許可承認を求めたりします。

こういった手続が行政手続です。経産省には6000以上の行政手続がありますが、オンラインで手続ができるのはまだ1割程度です(※2)。 私たちIT人材は、各法律や分類ごとのシステムプロジェクトに携わったり、経産省がVUCA耐性を持つため、また事業者の実状を示すデータをもとに必要な政策立案を行うことができるITアーキテクチャを目指して立案企画実行しています。行政が扱うデータの機密性を考慮しながら、ユーザー視点で使い易いサービスを目指して。

かなり大掛かりに聞こえるかもしれませんが、実は情報プロジェクト室には私たち9名の民間IT人材を入れて20人もいません。もちろん予算は一定のルールに従い決められるのですが、「何をやるべきか」の設計図は室内に提案すれば室長判断で進める事ができます。

決断が早い分、責任感を感じることもあります。しかし民間企業では味わえなかった、社会への貢献度を直に感じる事ができる場所だと私は感じています。実際、自身の仕事がニュースや新聞で取り上げられた時は達成感がハンパなく、大げさですが「生きてて良かったー!人の役に立てたー!」と思えたものです。

3.人脈の広がり

行政組織はよく縦割りだと非難されます。たしかに"組織"の単位では様々な課題があるのはたしかです。しかし職員個人は色々な人脈を持っている事を知りました。

情報プロジェクト室も、経産省出身の人ばかりではありません。他省庁から出向している人、自治体から研修員として来ている人がいます。また職員は数年に一度人事ローテーションがあり、色々な部署を経験します。他省庁に出向・異動することもあります。このローテーションにはデメリットもありますが、人脈を広げるという点ではメリットだと思います。

職員の人達も縦割りがいいと思っている人はいません。あちらの省庁で同じ悩みはないか、一緒に協力して何かできないか、自治体の人達の考えはどうなのかという時、誰かの人脈を使ってリーチを試みる事が多いです。さらに民間企業やCivictech/Govtechとのコミュニティ形成も大事にしています。

情報プロジェクト室を卒業してもFacebookやSlackを通して繋がりを続け、何かあったらすぐに助け合える環境が整っています。仕事は壮大ですが当然1人の力は限られているので、この場所で出会えた仲間との一生の繋がりを大事にしているところだと感じます。

また、行政のデジタル化は経産省単体で進めれば良いと言うわけでなく、デジタル庁が中心となって進めている「デジタル社会の実現に向けた重点計画」という社会全体の計画に沿って、無駄のない最適な仕組みにしていく必要があります。

ITに関わる1人の国民としてこの重点計画を読むと、本気でこういう社会を実現したい、本気で作っていかないとこの先大変な事になるよな、という想いが沸々と沸き上がります。私には6歳と4歳の子供がいますが、彼らの分別がついた時、誰がこんなイケてない国にしたんだ、ではなく、日本に生まれて良かった、と思ってもらいたい。

私は非常勤職員という立場での採用なので、経産省での雇用には期限があります。次のキャリアパスを考えたとき、この沸き上がる想いをまだまだ仕事で形にしたい、まだまだやること満載、やりがい満載の行政という領域で、デジタル化の良さ、その術を一緒に考えられたらと思うようになりました。

4.行政DXを進める仲間を募集しています

ひたすら独り言を書いてきましたが、行政って実際どういうところなの?最近デジタル庁とかできてるけど、行政のIT化って何するの?と疑問に思っている方に、少しでも参考になれば嬉しいです。

また情報プロジェクト室長が昨年卒業したメンバーに向けて書いたnoteもご紹介します。

そして情報プロジェクト室では、新たに2022年4月から共に経産省のデジタル化を進めるIT人材の募集を始めました!

ITアドバイザリー

ローコード(Power Platform)エンジニア兼ITアドバイザリー

データエンジニア

セキュリティエンジニア兼ITアドバイザリー

私のように行政ゼロ知識の方も大歓迎。社会にインパクトを与える仕事がしてみたい、キャリアの1つとして行政を経験してみてもいいかもという方、ぜひご応募お待ちしています!


※1:地方自治法における普通地方公共団体の定義

※2: 経済産業省デジタル・ガバメント中長期計画


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