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行政文書をマークダウン化しよう!ところでマークダウンって何?


先日、我が情プロ室の面々が書いた「経済産業省 Digital Service Playbook」をバージョンアップしました。

今回の更新の目玉は2つあり、1つは前回のリリース時に惜しくも執筆が終わらなかった「デプロイ」「運用」章のリリース。そしてもう1つは、PDFのマークダウン化です。

はい、マークダウン(Markdown)です。

えっとー、何それ??と思った方、ぜんぜん恥ずかしくありません。私も長らくIT業界でSEとしてご飯を食べてきた身ですが、つい1年前までまっったく縁がなく、存在すら知りませんでした。それが最近少しずつ、普段の業務の中に溶け込んできて「あれ、これ使えるじゃん?行政の世界でも、使い方によっちゃ可能性無限大じゃん?」と思い始めました。今日はその良さについてご紹介したいと思います。

1.わかりやすいマークダウンの説明を見つける

Wikipediaでは、マークダウンを「文書を記述するための軽量マークアップ言語」と紹介しています。おそらくIT業界に近いところにいる人には、この説明で十分なのかもしれません。まず”マークアップ言語”を知っていること大前提な説明ですもんね。でも、そうでない世の大半の人はおそらく、これを見た時点でもう、マークダウンを知ろうとする気持ちが萎えてしまう気がします。

そこで、もっとマークダウンをわかりやすく説明できなかなぁとサイトを探しました。

最初に見つけたのがこのユーザー会さんのページです。こちらにマークダウンとは「文章の書き方」とあります。なるほど簡単。軽量マークアップ言語よりは、かなり柔らかくなりました。ただ、むしろ簡単になりすぎて今度は具体的なイメージが沸かないか?

次に見つけたのは、こちらのブログです。

ここでは、「手軽にドキュメントを装飾できるフォーマット」とあります。うんうん、なんとなくイメージしている説明に近づいてきました。

そして最後に見つけたのが

https://wa3.i-3-i.info/word16753.html

単なる「ファイルの書き方ルールの1つ」ですよと。これですかね。

人間社会に「日本語」「英語」「ドイツ語」などの様々な言語があるように、デジタル世界でも、HTMLとかXMLとかPDFとか、いろいろな言語(ファイルの書き方ルール)がある、そのうちの1つがマークダウンという言語。それ以上でも以下でもない、ということですね。マークダウン言語を使って書かれたファイル名の最後には「.md」がつきます。

この記事を書くにあたり、心を真っ白にしてマークダウンを知らない人の気持ちで、改めてマークダウンの説明を探していると、「他と比べて、ルールが簡単」や「HTML形式への変換が簡単」という、マークダウンのメリットを強調したいがゆえの想いが強すぎたりして、そもそもルールもHTMLもよく知らない人にとっては、逆に良さが伝わりにくい定義になっているように感じることもありました。

2. マークダウンの良さに気づいた出来事

私も正直、最初はその良さが理解できなくて、「書き方ルールなのはわかったけど、なぜわざわざそのルールで書かないといけないんだっけ?Wordやテキストエディターなど諸々、文章を書くためのソフトには別に困ってませんけど」という気持ちでした。そんな時、PDFで公開した我が情プロ室のPlaybookにコメントを下さった方がいたのです。

このPlaybookは、我々経産省のデジタル化を日々推進する中で、つい時間やお金や現状のせいにして忘れてしまいがちな「大事な事」を思い出すため、そして今後同じタスクを担う人にその精神を伝えるために、何より自分たちのために書いたものでした。

・現状の組織のあり方に文句を言うのでなく、新しいカルチャーを経産省に作るという強い意志を持つこと
・ユーザー(国民)視点でサービスづくりせねばならない
・おかしいと思ったことは戦い、攻めきれるところまで攻める。その一歩が世の中を変えると信じる

わたしは民間IT企業から経産省に中途入社した身です。行政組織は古くから積み重ねられ大理石なの?ってくらい硬く、巨大な岩盤。「根拠となる法律がないと動けません」が殺し文句のカルチャー。だからと言って文句を言っても始まらないのはわかってる。でも人間、言ってしまうこともある。。そして愚痴った後に、Playbookを読み返す、そして一歩進む。そんな使い方をしています。

Githubで頂いたコメントにあった、「PDF以外にしたら活用する行政組織もいるのでは」の言葉に、このPlaybookのどこかの一文が、別の地で行政デジタル化に関わる人に活用してもらえるなら素敵だなと思いました。さらに、この文章をマークダウン形式にすることで、人から人へ文章を広げやすくなる、という事に気づいたのです。

3. マークダウンなら行政文書を軽量に拡散できる

わたしたちがデジタルな文章を書くとき、通常は「何に書くか」で、その「フォーマット」が独自に裏で決められ記録されます。例えばMicrosoftのWordに文章を書くと、そのフォントサイズ、フォントタイプ、下線、センタリング、表など文章に対して施したさまざまな「装飾」は、Microsoft Wordが定めたルールで記録されます。

次にその文章の一部をWebサイトに載せたい、となったら、今後はその「装飾」をHTMLのルールで記録しなおさないとWebサイトには表示されません。「記録しなおす」部分は、最近の変換ツールが使える場合もありますが、装飾によっては1から書き直さないといけなかったりします。このように別の人、別の媒体に文章を共有する、広げていくという行為にフォーマット変換という作業が伴い、その推進を阻害します。つまり変換がうまくいかないと、めんどくさ、ってなります。

マークダウンは、その「装飾」にかかるルールを単純にし、必要最低限にし、文章そのものを多くの人や媒体に簡単に広げられるよう考えられています。考案したアメリカのライター JOHN GRUBERによれば、

マークダウン記法のデザインゴールは、ファイルをプレーンテキストとして開いた時に、文章がきちんと読める事

としており、HTMLのようにコードやタグが埋め込まれてて何が書いてあるかよくわからん、という状態にしたくなかったとあります。(HTMLを見たことない方、げっそりしたい方、さっそくこの画面を右クリック→「ページのソースを表示」でお試しください)

つまり、文章を綺麗に仕立てる「装飾」はほどほどに、HTMLを始めたとした様々な形でその「中身」が広くシェアされていくことに重きを置いている記法だと感じます。


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マークダウン(左)、プレビュー(右)

そしてここにきて、冒頭のWikipediaの定義にあった「軽量」という言葉の意味を理解しはじめます。この軽量さを、行政が発信するあらゆる文書・メッセージに適用できたら、もっと国民と行政の距離は縮まるんじゃないか、そんな可能性を感じています。例えば中央省庁がマークダウンで発信したことを、各自治体が特に伝えたい部分だけを切り取り、またマークダウンや他の言語で発信。それをさらに関係する団体や個人が発信、とTwitter級の情報発信力・スピードが発揮できる気がします。

最近自分の業務でも、議事メモを書いたり、引継ぎ文書を書いたり、次にこの文章を誰にどういう形で共有することになるかわからない時、とりあえずマークダウンで書いておこ、と思う事が増えました。ここではマークダウンの具体的なメリットについて触れませんが、興味のある方には個人的おすすめサイトをのせておきます。

行政が発信する文書は、ホームページの奥深ーくの、探しにくーい場所にひっそりPDFやWordで公開されている事が多いです。それは悪しき慣習ともいえますが、ただ伝え方が不器用なだけなのかもしれません。もっと広く知ってもらうために、自分が唯一の発信者という考えを捨て、「受け取った人は次は発信者」になってくれることを想像して発信手段を選ぶことを、経産省内にも発信していきたいと思います(マークダウンで!)。